ポスト真実の羅針盤 - これも情報操作？意図的に仕掛けられた情報を見極める視点

これも情報操作？意図的に仕掛けられた情報を見極める視点

Tags: 情報リテラシー, 情報操作, ステルスマーケティング, 情報見極め, 批判的思考

ポスト真実時代における見えにくい情報の形

日々、スマートフォンを通じて膨大な情報に触れている皆様にとって、情報の真偽を判断することは大きな課題となっているのではないでしょうか。SNSやニュースアプリ、ウェブサイトには、様々な情報が次々と流れてきます。その中には、単なる事実誤認や誤報も含まれますが、さらに複雑なものとして、「意図的に操作された情報」が存在します。

ポスト真実時代と呼ばれる現代では、「何が真実か」よりも、「何が人々の感情や共感を呼ぶか」が重視される傾向が見られます。このような土壌では、特定の目的を持って、あたかも自然に広まっているかのように見せかけたり、個人の率直な感想や意見のように装ったりする「意図的な情報操作」が巧妙に行われることがあります。

私たちは、このような情報操作に気づかないうちに影響を受け、購入するもの、信じること、あるいは抱く感情までが左右されている可能性があります。しかし、全ての情報を疑うあまり疲弊してしまうのも避けたいところです。

この記事では、身近に潜む意図的な情報操作にはどのようなものがあるのか、そして、それらに気づき、惑わされないためにどのような視点を持つことが役立つのかについて考えていきます。

意図的な情報操作とは？身近な事例

意図的な情報操作とは、特定の個人や組織が、自分たちの目的（商品の購入を促す、特定の意見に誘導する、評判を操作するなど）を達成するために、事実の一部を強調したり、意見を事実のように装ったり、あるいは発信元を隠したりする行為を指します。

皆様が日々の情報接触の中で出会う可能性のある身近な例としては、以下のようなものが挙げられます。

ステルスマーケティング（ステマ）: 広告であるにも関わらず、それを隠して、あたかも一般の消費者の感想や口コミであるかのように見せかける手法です。インフルエンサーが企業から報酬を得ていることを明示せず、商品やサービスを絶賛する投稿などがこれにあたります。
アフィリエイトリンクの非表示: 特定のウェブサイトへの誘導や商品購入によって紹介料を得る仕組み（アフィリエイト）において、そのリンクが収益目的であることを明確に表示しないケースです。「本当におすすめ！」といった強い言葉と共にリンクが貼られていても、それがビジネスに繋がるものかどうかが不明瞭な場合があります。
ポジショントークを隠す: 専門家や評論家が特定の企業や団体から依頼を受けて意見を述べているにも関わらず、その事実を隠して中立的な立場の意見であるかのように見せる手法です。
意図的なデマやゴシップの拡散: 特定の個人や組織の信用を失墜させる目的で、根拠のない情報を作り出し、ソーシャルメディアなどを通じて拡散させる行為です。

これらの手法は、受け取る側が「これは広告だ」「誰かの意図が働いている」と気づきにくいため、より自然に、そして効果的に影響を与えることができます。

なぜ私たちは情報操作に気づきにくいのか？

意図的な情報操作が巧妙であることに加え、私たち人間が持つ心理的な傾向も、それに気づきにくくさせている要因の一つです。

信じたいという気持ち: 私たちは、自分の考えや価値観に合う情報を無意識のうちに受け入れやすい傾向があります。また、「お得な話」や「魅力的な商品」に関する情報は、否定的な情報よりも受け入れやすく感じることがあります。
多数派への同調: 多くの人が「良い」と言っているもの、「話題になっていること」は、つい正しいと思ってしまいがちです。「バズっている」情報には、特にこの傾向が働きやすいかもしれません。
感情的な反応: 驚きや怒り、喜びといった強い感情を伴う情報は、私たちの注意を引きやすく、冷静な判断を鈍らせることがあります。意図的な情報操作は、しばしばこのような感情を巧みに利用します。
情報の「見え方」: 個人の体験談や親しみやすい口調、あるいは専門家風の権威ある雰囲気など、情報の形式がその内容の真偽とは関係なく、信頼できるように見せてしまうことがあります。

これらの心理的な傾向や、情報が提示される「見え方」が複合的に作用することで、私たちは知らず知らずのうちに、意図的に仕掛けられた情報を受け入れてしまう可能性があるのです。

意図的な情報操作を見極めるための視点

では、このような意図的な情報操作に惑わされず、自分自身で情報を見極めるためには、どのような視点を持てば良いのでしょうか。全てを見抜くことは難しいかもしれませんが、少し意識するだけで、情報の見え方が変わってきます。

「誰が」「何のために」を改めて問う: その情報が、誰によって発信されているのか、そしてその発信者は「なぜ」その情報を伝えているのか、という根本的な問いを改めて考えてみてください。個人的な親切心からの共有なのか、それとも何らかのビジネスや主張に繋がるものなのか。発信者のプロフィールや過去の言動などもヒントになることがあります。
「広告ではないか」という視点を常に持つ: 特に商品やサービス、特定の意見を強く推奨する情報に触れた際は、それが広告である可能性を一度疑ってみることが大切です。「PR」「AD」「アフィリエイト」といった表示がないか確認するだけでなく、表示がなくてもその可能性があると心に留めておくことも有効です。
極端な感情に訴えかける情報には注意する: 「絶対に〇〇できる！」「信じられない効果！」「知らなきゃ損！」など、過度に感情を煽る表現や、断定的な言葉には冷静な視点を持つように心がけてください。感情に流されず、情報の根拠や具体的な内容を落ち着いて確認することが重要です。
「メリットばかりではないか」と探してみる: 商品やサービス、あるいは特定の主張の良い点ばかりが強調されている場合、意図的に都合の悪い情報が隠されている可能性があります。デメリットやリスク、あるいは反対意見など、異なる側面からの情報も探してみる習慣が役立ちます。
その情報で「誰が得をするのか」を考えてみる: その情報が広まることで、最も利益を得るのは誰なのか。発信者自身なのか、あるいは別の誰かなのか。このように利害関係者の視点から考えることで、情報の裏にある意図が見えてくることがあります。

これらの視点は、情報を鵜呑みにせず、一歩立ち止まって考えるための羅針盤となります。すぐに全てを実践するのは難しくても、日々の情報接触の中で、これらの問いを時々思い出してみるだけでも、情報との向き合い方が変わってくるはずです。

自信を持って情報と向き合うために

情報過多な時代において、すべての情報の真偽を見抜くのは不可能に近いかもしれません。意図的な情報操作も日々巧妙化しています。しかし、だからといって情報判断を諦める必要はありません。

大切なのは、完璧に見抜くことではなく、「これはもしかしたら、誰かの意図が働いている情報かもしれない」と気づき、一度立ち止まって考える習慣を身につけることです。そして、ご紹介したような見極めの視点を使って、自分なりに情報を吟味してみる。